TRIX, 2段増感、HC110 Dil-B をスタンダードにしてやって行こう、と決めた。 これだと高感度でコントラスト高めでパンチのある好みの仕上がりになる。
でも畳と女房は新しい方がなんとかじゃないが、やはり他のフィルムや現像液に興味は湧くものだ。
いろいろなフィルムを試すにはどのフィルムでも同じように現像できるDiafineという現像液を使うと便利だ。以前は良く使っていて、Flickrにもかなりの数のDiafineのサンプルを出している。
Diafineは半永久的に再使用できるので経済的だが、フィルムの染料が溶け出てエグイ色になるし、消しゴムのカスみたいな結晶体ができるので使う度に漉さないとならない。それに本命のTRIXが妙にのっぺりしたでき上がりになる。スキャンした後にいじっても残る独特なのっぺりが好きでなくだんだん使わなくなった。
で、HC110のバックアップとして使いだしたのがRodinalだ。RodinalはHC110と同じように25:1ぐらいに薄めて10分位撹拌するという普通の使い方もできる。 だが100:1や200:1に薄く希釈し、撹拌せずに長時間置くスタンド現像方式で使う事もできる。 薄めて無撹拌で使う事によってDiafineのように(化学的に)自動補正が掛かるのだ。
この補正効果は面白い。フィルムの明るく感光した部分の現像を先に止めてしまうのだ。 明るく感光された部分は周りの現像液が短時間で使い果たされてしまい(かき回さないので)それ以上現像が進まない。 逆に暗くあまり感光されなかったところは現像が進み続ける。
通常は短時間で現像が進み、ムラになりやすいので撹拌しないとならない。 そこで高希釈の薄い現像液を使うと現像が非常にゆっくりと進むので無撹拌でもムラになりにくい。
Diafineはさらに面白い仕組みで、フィルムに染み込ませた現像液を反応させて現像するのだ。まずA液をフィルムに染み込ませ、次にB液に浸して活性化させ現像する。
するとハイライト部分はフィルム内部の現像液が使い果たされて現像がとまり、影の部分は現像が進み続ける。 染み込んだフィルムベース内で起きる反応なので撹拌は無関係。 温度も関係ない。 3分と現像時間は短いが、これも3分さえ掛ければ後はいい加減でかまわない。 タンク内に残った現像液はまた再利用できる。 消費するのはフィルムに染み込んだ分だけなのでちっとも減らない。
Diafineは補正効果のおかげで増感現像になり、TRIXはISO1200相当のフィルムになってしまう。 だが、これも補正効果のおかげで正確である必要は無い。実際TRIX はISO400からISO3200ぐらいまではコントラストや粗さは変わるが普通に現像されてしまう。 コマごとに感度を変えても良いのだ。
と、良い事ばかりの魔法の現像液なのだが、Diafineは補正効果が強く、白も黒もとびにくく、階調がたっぷり残った、つまり全体的にのっぺりした眠いネガに仕上がる。 スキャンしてデジタルで焼き込む素材としては良いのだが、TRIXは極端にのっぺりした仕上がりになってしまうのだ。
悪い事にDiafineは現像効果をコントロールできない。毎回同じに仕上がってしまう。
で、Rodinalを高希釈で使い、スタンド現像すると、仕上がりは違うが同じような補正効果がある。 こちらは時間や初期撹拌で仕上がりのコントロールが効くのだ。なのでいろいろなフィルムをいっぺんに現像してみたり、2時間かけて増感現像し、影の細かいディテールを拾いだしたりする事もできる。それにRodinalはHC110よりグレインが強く出るのでよりモノクロらしい画になる。
と言う事で、バシッとコントラストをだす時はHC110をロータリープロセッサーで現像して、ふんわりざらざらに仕上げたい時はRodinalの高希釈スタンド現像。 今のところこれにハマっています。