料理の世界には実にいろいろなスパイスがある。
日本で辛いスパイスというと胡椒とか唐辛子ぐらいだけど、唐辛子を含むチリ・ペッパーはアメリカ大陸原産だ。アメリカの南西地方のメキシコ国境沿いのニューメキシコ、アリゾナ、南カリフォルニアの地域の料理は辛いチリ・ペッパーを何種類も使い分ける。
催涙スプレー並みのきつさのハバネロペッパーとかは有名だけど、普通の辛さのチリ・ペッパーはいくつも種類があり、風味を出すために燻製したり、天日干ししたものを臼で挽いて細かい粉末にして使う。
実は昔やたらと料理に凝ってた頃、このチリ・ペッパーにハマっていた事がある。
最初はただ辛ければ良い、とか愚かな事を考えてたけど、そういう事ではなかった。 どのチリ・ペッパーにもそれぞれ独特の風味と香りと辛さがあり、いかに上手く料理に活かすか、というのが難しい。 香りはあまり無いがふんわりと熱を感じるような辛さにするとか、燻製の香りを強く出すとか、いくらでもやり方があるからだ。
風味と辛さに慣れるとちょっと辛いぐらいがとても美味しく感じられるのはカレーと同じだ。でも加熱して香りが飛んでしまうからと、量を足すと辛くなりすぎたりする。このへんはある意味本場のカレーより難しいかもしれない。 料理はなんとも奥が深い。
先週、サンディエゴから30キロほど北上した海岸の街でスパイス屋さんを見つけて入ってみた。全部で数百種類あるスパイスを鮮度を保つために少しずつ挽いて売っている。 奥の方にいったら棚に数十種類のチリ・ペッパーを売っているので二つばかり買ってきた。
一つはチポレ。 真っ赤に熟したハラペニョ・ペッパーを燻製したのをチポレといい、メキシコのチワワ州原産のチポレをモリタスという。 中辛で燻製の匂いが良い。
もう一つはニューメキシコ・チリ・ペッパーで、これはアナハイム・ペッパーを干して挽いたものだ。マイルドな辛さでふんわりと大地を感じる風味がする。 アナハイム・ペッパーはもとはカリフォルニアのアナハイムから広まったそうだが、この匂いと辛さはカリフォルニアからニューメキシコまで、サウスウェスタン料理にはつきものの味だ。
そうそう、チワワはもともとメキシコの地域の名前で、犬のチワワ種もそこが原産だそうだ。なのでアメリカのテレビに出てくるチワワ犬はメキシカン英語を喋るのがふつう。