しばらく前にニコンS2を手に入れた。 もともとデザインに惹かれるものはあったけど、手にしてみるとなぜかとても懐かしい。
なぜだろうと思っていたらある日気がついた。
初代ウルトラマンに科学特捜隊ってのがあった。 S2はあれなのだ。
ニコンS2
ニコンS2は1950年代のデザインだ。自分の中では終戦後、大して間をおかず作られたカメラということもありあまり気にしてなかった。
でもついつい手を出してしまうのがカメラ好きの性というやつだが、自分のものになったS2を手にした時、その精巧さと重厚感に驚いた。
手に持った感覚もいい。しっくりする。
ライカはIIIaからIIIf、そしてM2からM6まで持ってるがS2のフィールはどれと比べても遜色が無い。可動部はかっちりとスムースに動く。ファインダーもちょっと暗いがバルナックライカより数段上だ。
これが60年も昔の日本の工業生産の実力だったのか。なんと素晴らしい。
そしてこのデザインだ。 これが悪くない。というよりかなり良い。トップカバーの形状とか採光窓の大きさと配置とか、平面のプロポーションとか、ヨーロッパでもアメリカでも無い。 欧米人から見ても日本独特の感覚, uniquely Japaneseだ。
そしてとても懐かしい。 日本っぽいのだ。いい意味で。
科学特捜隊
なぜ懐かしいのか。なにが日本っぽいのか。
ウルトラマンだからだ。
ウルトラマンはどうしても怪獣とウルトラマンがメイン扱いになってしまうのだけど、初代ウルトラマンは科学特捜隊という人間のチームも実は一応主人公だった。
この科学特捜隊の装備というのがある。流星バッジとかマルスとかジェットビートルとか。どれもデザインは日本の1960年代そのものだ。
この1960年代のデザインというのは、プロポーションや間のとり方を見ているとそのー世代前、1950年代のニコンS2などの造形デザインと感覚的な共通点が多い。 それだけでなく、1950年代の造形プロポーションをもとに、角張っていたものが1960年代には曲線化していったようにも見える。進化はしているが踏襲している。
初代ウルトラマンに見る近未来の世界、というのは実はニコンS2に見るような1950年代のデザインがベースなのだ。
逆に言えば1950年代の感覚がそれだけ優れていた、ということも言える。
日本の感覚
1950年代というのは、終戦後せいぜい10年だ。 そんな時代にすでに60年の時間の流れに耐える精密機械を作っていたのはすごい事だ。
だがニコンS2が語るのはそれだけない。国も山も住んでる街も焼けいろんなものが失われたそのたった10年後に、1950年代の日本人は後世に残るような、未来を夢見るデザインを創造していたのだ。
懐かしく感じるのはその時代の人たちが抱いていた、限りなく明るい未来の展望なのかも知れない。